2022/08/31 21:21

”ふなくらのそばができるまで”

 僕が富山にやってきたのは14年前。大学を卒業した年。はぐれ雲(引きこもり、不登校と呼ばれる若者の共同生活自立支援寮)の1年間の住み込みボランティアからスタートした。

 理由は、「自分のことを誰も知らない土地で、1から何ができるか知りたかった。」僕は一切、就活をしていない。周りが就活する中、その輪の中には入れなかった。”やりたいこと”っていうのを語れる仲間が羨ましかったし、それがない自分はなんてダメなんだと思った。

「安定」「給与」「休み」そこから選ぶも仲間もいた。僕はな~んか違うんだよな~っていう悶々とした毎日。僕の大人の理想像はお祭りで花火に火をつけるおっちゃん。地域で全力で、輝くおっちゃんっていうのが、僕の小さい頃のヒーロー。”地域のおっちゃん”っていう職業があったら就活してたかも(笑)はぐれでの生活は刺激的だった。

 大変さもあるけど、共同生活も農業もおもろかった。「来年の今日、自分はここにいない」を合言葉に多くの活動に参加しまくった。活動も終盤になると来年ここにいない自分が想像できなくなった。はぐれ雲、地域のおかげだ。何もなかった若造を必要としてくれ、活かしてくれた。はぐれに残ることを決意した。出会った当初から、代表は「地域が大事なんだ」「環境と教育をどう残すか」言い続けていた。あの悶々とした頃、自分はこんな大人に会いたかったんだと思う。何のために働くのかをストレートな言葉と行動で落とし込んでくれた。

 はぐれの寮生も地域に出れば、”力のある兄ちゃん”であり、地域の水路の泥上げ、草刈りなどで頼りにされる。農繁期には、地域で使われる苗箱を3万枚弱運ぶ。誰かから頼りにされ、感謝される。これは彼らにとって大きな意味をもつ。失敗しても「いいちゃ、いいちゃ」と再度チャンスをもらう。期待に応えたくなる。成長の機会が地域にある。 

 昨年、地域の農家さんがコロナの煽りを受け、売り先の失った5トンのそば粉を1人で抱えることになった。それこそはぐれと何十年と付き合いがあって、困ったときには駆けつけてくれるそんな農業の先生だった。いてもたってもいられず、体が勝手に販売支援に動いていた。

 はぐれを超えて地域で同じ思いをもった仲間が集まり”ふなくらや”という販売チームをつくった。リミットは1カ月。初心者集団で、トラブルも多かった。それでも5tさえ売れ切れたらストーリーだと信じ、止まらないことを決めていた。乾麺にしたら売りやすいと思い、地元製麺所も何か所かあたった。自家製粉した粉であること、粉にして時間がたっていることなど、乾麺化は無理とのこと。やはり粉で売るしかない!ひと月後、5tを売り切ることはできなかった。悔しさや、支援を頂いた感謝、一体感...悶々とした思いがあった。乾麺のアイディアをもらったとき、ワクワクした自分がいた。

 「よっしゃ、やっぱ乾麺にしよ。新そばで」ってなったのが12月。右も左もわからないまま、製麺屋さんをあたる。スーパーで売られていた乾麺パッケージの製造者に電話をかけては断られ、断られ、断られ、、、、10社断られ、「結局、素人が玄そば持ち込みしても、ダメなんか~い」ってなってたところ、灯台下暗し。知り合いの知り合いっていう、健康食品を扱う会社さんと出会い”ふなくらのそば”乾麺プロジェクトがスタートした。

 僕を相手にしても商売にならない、が、そば粉の販売支援をしていたことがニュースになり、それから気にかけてくれていたらしい。スタートをするもさすが行き当たりばったりだから、権利やら、販売者登録、製造者固有記号?色々うまくいかなくて、一度、二度頓挫。。。

 そこで僕の尻を叩いてくれたのがまた地域だった。4月にふなくら地区で外の人に来てもらう”お茶会”という行事を立ちあげたていた。以前に実行委員のママから「来た人に喜んでもらいたい、出店できませんか?」と言われていた。乾麺作る気満々だったから、「その頃には乾麺できてるっしょー」って安易な返事をしていたことを思い出し。「やべー、言っちゃってたなぁ」っていうのと、自粛ムードの中、新しいチャレンジをしようとするその人(ふなくらが大好き過ぎるママ)にエールを送りたい!「ぜってーつくる!」ってなって、その会社さんにその意思を伝えると、あと7日以内にデザイン、商品名、バーコード、などなど、すませないと4月のそのイベントには間に合わないとのこと。

 「やべーけどやるしかねー!」って、その矢先。。。家族がコロナで濃厚接触者となり、10日のひきこもり生活。。。パニック(-_-;)このときもかなり焦って記憶が、あいまい。この2人がいたからできた。とにかく助けてもらった。1人はバーコード取得やらの事務的な手続きを進めてくれた地域のねえさん。もう1人は「農業×アート」で農業を元気に!を目指す女の子。こんな素敵なデザインをしてくれた。もうギリギリだったから、途中検査なしで、ぶっつけ本番滑り込みセーフ。そんなスリリングなスタートをきった!今、地域の方から「地元のものを贈りたい」とお中元用の注文まで頂いている。

 「とにかく地域が大事」。僕もそう思う。僕はたくさん助けてもらってきた。僕も誰かの力になりたい。僕は小さい頃に憧れていたかっこいいおっちゃんに近づけているんだろうか。小さな町の素人集団の小さな動きかもしれないけど、同じように元気を必要とする地域へ届いて元気が感染したらいいなって勝手に思ってる!小室哲平